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地下の都市とその歴史


今日は星々の壮大な物語からは一旦離れ、地下に落ちた5つの街とその理由についての話です。
前に書いたこの記事がバザールの視点から見たFLとすれば、今回は人間の視点から見たFLの歴史と言えるでしょう。
夏のセールなどでUnterzeeを旅する船長が増えた気配があり嬉しいかぎりです。今回の記事はSSと直接的な関係はありませんが、地下に落ちてきた街の知識があるとSSでもこの島は第二都市の文化が残されているな等考えながらプレイできてよりいっそう楽しめるはずです。
FL/SS両ゲーム+αの大望クリア程度までのネタバレを含みます。


・前書き
フォールン・ロンドンの物語とは愛の物語にほかなりません。FLの元々の作者であるアレクシス・ケネディはFLのテーマを『望み(desire)と、それを叶えるために払う用意のある対価』だと語っています。これ以上に的確にFL/SSの世界の基軸を表した言葉はないでしょう。(作者なので当然といえば当然ですが。)
この世界における望みは主に愛として表れます。Sunless Seaをプレイして初めに突き当たる疑問、何故街が地下に落ちたのかという問いも愛によって説明することができます。
歴史の中で、繁栄する街の支配者たちはバザールと契約を交わし街を差し出すことで、自らの望みを叶えようと繰り返し試みてきました。
ここでは各街が具体的にどのような望みによってNeathへと落ちることになったのか、簡単に見ていきましょう。

・第一都市:テル・ブラク(不詳 紀元前4000年程度?)
一番初めにNeathに落ちた街の名前は、実のところゲーム中ではっきりと語られたことはありません。他の地下に落ちた街についても名前がはっきりと語られているもののほうが少ないのですが、遺跡や過去の街の住人たちの言葉からファンの間ではある程度の定説が出来上がっています。
一般に、第一都市はForgotten Quarterに残る眼の模様の入った遺跡などからテル・ブラクとされています。また一説に、近くにある大都市のウルクとも言われています。

この街の王は不治の病にかかった恋人の命と引き換えに自らの街をバザールに差し出しました。恋人は命だけは助かったものの姿が大きく変わってしまいました。
この街の物語はFL内Heart's Desireで主に語られています。

・第二都市:アマルナ(前1300年代)
この街は、地下に落ちてくる前はその名の通りアマルナ文明の中心地でした。エジプトと聞くとこの辺りの時代を想像する人も多いのではないでしょうか。
この街の女王は蛇にかまれた王の命を救うため、バザールと契約を結びました。これまたはっきりと名前が語られることはないのですが、この女王と王はネフェルティティとアメンホテプ4世ではないかと推測されています。

現実における19世紀のイギリスでは、エジプト風の物がもてはやされていました。例えばシェリーのオジマンディアスが書かれたのもこの時期で、ほかにもエジプシャン・ホールという分かりやすい名前の半分博物館、半分見世物小屋のような施設などもありました。
しかし、フォールン・ロンドンにおいては、バザールの支配者たちがいくつかの理由からエジプトを嫌っているため、街からエジプト風の物がほとんど失われてしまいました。彼らの前ではエジプトという名を口にするのも避けた方が良いでしょう。
その理由の一つについては次の街の項で触れます。

・第三都市:チチェン・イッツァ?(800~900年代)
第三都市の名が作中で触れられたことはありません。しかし残された遺物などからマヤ文明の都市のひとつであることが明らかになっています。
プレイヤーの間ではいけにえを捧げる泉のあったチチェン・イッツァが有力な候補となっています。

年代を見ると、第二都市の落下から第三都市の落下までには長い時間がたっていることが分かります。これはファラオの娘たちの計略によって街の寿命が引き延ばされていたためです。
バザールとその支配者たちは早く次の街を落とそうと焦っていました。だからこそ彼らはあのような契約を結んでしまったのでしょう。
第三都市を治める者たちが都市の代わりに要求したのは愛する人の命ではありません。彼らは神の肉を求めたのです。
そしてバザールはその対価を払ってしまいました。
ぼんやりした書き方になってしまいましたがこの辺りについてはまたいずれ詳しく書きたいと思っています。

・第四都市:カラコルム(1200年代)
カラコルムはかつて偉大なるカーンの築き上げたモンゴル帝国の一大都市でした。現実世界においては明による北伐によって陥落しています。
しかしFL世界においては、王女がその侵攻前夜にバザールと契約を結び、都市ごと地下へと逃れおおせました。また、ほかにも動機として異国の彫刻家との身分違いの恋などもあったようですが、このあたりの経緯についてはFLのスピンオフ作品であるSilver Treeで詳しく描かれています。

カラコルムの都市自体はロンドンの落下によってつぶされてしまいましたが、その名残は街のあちこちに(特にForgotten Quarterに)残されています。そして生き残った者の子孫はロンドン東の海域に浮かぶ島へと逃れそこに堅牢な都市国家を築き、カーネイト(Khanate)を名乗っています。

・第五都市:ロンドン(1861年)
5番目に地下に落ちてきたのは我らがロンドン、女王陛下のロンドンです。
当時イングランドを治めていたヴィクトリア女王は、史実と同じく腸チフスに罹った夫アルバート(Prince Consort)の命と引き換えに街を引き渡しました。
ヴィクトリア女王の夫への愛は有名で、彼の死後生涯喪服を着続けたエピソードもよく知られています。
この街については書き出すときりがないので、短めに切り上げることにします。

・第六都市?
さて、バザールの計画が上手くいっていれば(バザールについて詳しくはこの記事で)六番目の街がいずれはロンドンの上に落ちてくることになるでしょう。しかし、なんだかんだ言ってロンドンの落下からまだ30年程度しかたっていません。予定上はまだしばらく安全なはずです。
しかしもちろん実際にはバザールの計画は全く上手くいってはおらず、そもそも計画を軌道に戻そうと努力しているかすら定かではなく、支配者たちは内輪で対立し、六番目の街候補は早くも決められようとしています。溺れる者の信奉者たちは六番目の街は決して落ちることがないと語りますが、しかし、私たちプレイヤーには、なにがあろうとも六番目の街はいずれやってくるだろうとの約束が結ばれています。
約束されたその地の名はパリ。愛の街です。

・その他の都市
さて、ここまでご覧になった熟練の船乗りの方々はきっと、あの都市はどうした?合計するともう7つに達していないか?等の疑問を感じたことでしょう。
例えばバーチェスなどはストーリー上でかつては地上の都市だったのが何らかの罰として地下に落とされたと述べられています。
しかしそうした都市はバザールと契約を結んだ結果落下したわけではないので、7つの都市のうちにはカウントされません。
余談ですが、そのため猿の帝国での宝探しに登場する「蝙蝠の落とした街の数」は5が答えになります。ロンドンが第五都市と呼ばれていることを知らないと解けない(つまりFLプレイヤーでないと実質ほぼ解けない)不親切な問題ですね。
第七都市についても近頃その名が仄めかされたことがあります。しかし正直に言ってまだ仄めかし以上の言及では無いので、今回は触れないことにします。



以上、地下の都市の歴史でした。
最後に、これらの設定が固められたのはSSの制作時期だったらしいということを書いておきます。
そろそろ(このブログのタイトルの由来でもある)Saltの話がしたいですね……

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